綴じた世界

【花が咲く日、きっと涙も止まるよと言った君】 23題

は 花の向こうには誰がいる
な 涙にだってなまえはあるのに
が ガラクタだらけのパレード
さ さよならの蕾
く 腐り落ちたのは果実だからと思いなさい
ひ 筆跡辿って兎穴

き 奇跡だけ食べて
つ つまり終わりがないってこと
と 遠吠えなんて破いてしまえ
な 失くしたものはぜんぶ池の底に沈んでる
み 見つけてほしいのは裏切り者だっておなじ
だ 駄作で終わればよいものを

も 文字に心臓を与えたために

と 止めた秒針は今も六時を告げてくる
ま 幻さえも少女を隠す
る 累が呼んだ花曇り
よ よい子のためのかなしいエピソード

と 常春が死ぬる庭

い 愛しさよりも吐き気が勝った
つ 次から次へと角砂糖
た たとえ話みたいに話したけれど
き 切り裂きジャックのハート狩り
み 三日月落ちた五月の顛末

【君がいない】 6題

き 気狂いじみた手紙を書いた
み 水をかけてもおしまい、火であぶってもおしまい
が 我執が空を覆ってしまった
い 祈るくらいなら探しなさい
な なかったものといらなかったもの
い いつかの三文字に縋って

【ぼくが知りたかったぜんぶの答えを、君は持っていってしまったのか】 32題

ぼ ボロボロでくしゃくしゃの一枚目
く 苦し紛れについた嘘が嘘じゃなくなる日
が 画家から黄色を奪ってそれから
し 知らない、どうせ本物じゃない
り 理由ではなく言い訳が欲しいのです
た ただし君はいないものとする
か 駆けつけた惨劇と間に合わなかった幕引き
つ 捕まえますからどうぞ果てまでお逃げなさい
た ただただおもうのはあの子がまた迷子になってないかということ

ぜ 是を否に代える銀のコイン
ん 「N」で始まる単語のすべて
ぶ ブリキの首を刎ねるお遊び
の のべつ幕なし芝居を続けよ
こ 心を映す鏡の破片
た 正しさにばかり縋っていては
え 円環で閉じた国
を 乙女の眠りを守る騎士

き 絆より深めたかったのはこの傷でした
み 妙艶なるは我が女王
は 破滅にしますかワインにしますか

も 目次に隠した最期の章
つ 蔦と足首
て 手慰みに未練を縊る
い いささか無粋でしたでしょうか
つ 綴りたいのは涙かもしれない
て 敵になるか弟でいるか

し 死因と動機と台本と
ま 巻き戻して繰り返してまたおなじ棘を踏んで
つ つまらないなら書き直してくれたらいい
た 楽しかったことをぜんぶ思い出にしてしまうひと
の ノクターンマインド
か 哀しみは宝箱に、思い出は屑籠に

【君の名を綴ろう、君のしあわせを紡ごう】 21題

き 君には聞かせられないおはなし
み 蜜味の紅茶とお手製のケーキ
の 喫んだ紫煙もあの子も消えて
な 泣いてしまうから今は会えない

を 犯した積みが潰した一夜

つ 連なる余白を埋めるため
づ 尽くしの忠義で濁ってしまった
ろ 朗読した誰かの台詞
う 運命だった、そんな言葉ひとつに負けて

き 消えてしまった前日譚
み 未必の完成エピローグ
の 野ばらよりも赤い花花がぼくの部屋に咲き誇る
し 知らずのうちに救われて、君、図々しくはないか
あ 明日でなければならない理由をひとつ
わ 罠を仕掛けて嘘もついてそれでも捨てられなかったもの
せ せっかく奈落なのだから

を 踊りましょうと猫がいう

つ 続きを聞きたいのなら黙っていることだ
む 向こうにいってしまったんだとばかり
ご 午睡がゴールとも知らずに
う うん、ほんとうはね、ずっとずっとここで見てた

【物語はいつも君のためにある。】 17題

も もう時計の針だって動きだしたんだ
の 飲み込んだぜんぶを吐き出して残ったもの
が 瓦解は悪夢に射す光の仕業
た 訪ねてくれたのも尋ねてくれるのも
り 理に適ったお別れ

は 箱庭に棲む兎は待っていた

い いくつかの約束と絡めた小指
つ 綴りで遊ぶことを思い出して
も 亡者は僕の方だった

き 記憶のほとりで少女はねむる
み 見果ての夢からおかえり

の 野晒しベンチでもう一度

た 誰が為の鐘だったか、あの日、君に逢えた
め 目を逸らしたのがいちばん最初の罪だった
に 偽物でも理想でもなくただ君がいるということ
あ あなたの幸いで手紙が埋まりますよう
る 累月にも霞まない、花の面影は君だった

花が咲く日 きっと涙も止まるよと言った君
君がいない
ぼくが知りたかったぜんぶの答えを
君は持っていってしまったのか?
君の名を綴ろう 君のしあわせを紡ごう
物語はいつも君のためにある。