Rule

▼どれでもお好きなだけどうぞ

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水彩に生まれなおしたい

恋よりは凍傷
不在証明になるまえに
鏡が生まれた六月

双子座心中
卵生万華鏡
仮定紫陽花

「春がとじてくれたらいいのに」
空の欠片をまばたきと呼ぶ
滲んだ文字もとっくにかわいて

しんじつよりも酷いことば
いつか歌になる
名前を書いたら僕のもの

イカロスへの近道
たぶんこれが将来
はずれてほしい天気予報

糸も青ざめていく
おなじ傷でべつの思い出
ナイフアンドストロベリー

参考文献によるとp
401から
質問には質問で返したいひとですか
わたしが答えたくない方のこたえです

57577回目にやっと正解
冬がずっと残っている
甘かったのは蜜だけ

「ジョーカーにメモるな」
探偵はまだ秘密にかかりきり
クローバー保護法

ゾンビになるならゆるす
刻んでおけばまだ伸びる
おーい、まだ優しいか?

なんにでもなれるのにここでいいの
三叉路の迷子
変身と微熱変換

朝にとけてく選択肢
まだモンブランなのに?
せっかく赤いのに中指なのか

さみしいを可視化する

いつかが昨日になっただけのこと
どうか果実は青いものを選んで
三月の夜にしか降りられない

加護の手だって二本ある
寝言だと言い張ってはみたけれど
軋んでいるだけです綻ぶにはまだ早いので

追えばかならず目が合うところ
指さす先にはいつも可愛いがあるところ
どんなに遅れてもおかえりをくれるところ

いつも一呼吸分だけ間に合わなくて
いずれ片方だけでも離すつもりだから
いまはまだ水は水色のままでいいですか

恋情請負人と孤独代行者
手を貸してくれる模倣犯
疑いますか、愛しますか

融点もまだ輪郭をもっていた日
倫理の先生は否定していた
遠い海の成れの果て

あの人の支えになれるところ
泣くとこ見せてくれないところ
ただの冗談だと言い切ったところ
我慢してないって本気で言うところ
厳しいくせに優しくもあるところ
ラブもライクも信じないところ
言ったらぜったい驚くところ

もうトドメはいらない
したかったことしよう
ココアも苦いというの
子どもみたいって笑う
逃げないようにするね
きれいになってく右手
手拍子だけでも踊れる
くれた名前も返すから
0点だと叱ってくれる
たのしいよ痛くないよ
流す音楽は君が決めて
楽園になってしまった

たとえばの異界

ただの魔法だ奇跡じゃない
遠くに橋が架かるという噂
エンデみたいなオルゴール
薔薇いろほどけて冬になる
脳と目と口、あとは捨てて
凍てつく国のやさしい零度
回廊と回廊をむすぶ赤い糸
いつか砕ける思い出の宝石

まぼろしならあそこに立ってる
炎よりも光よりも孤独のままで
嘘だと笑ってほしい真実なんて
使いの者には言えた祝福の言葉
輝きを失ってもなお永遠だから
違和の怪物なら背中に飼ってる
似ているでしょう本物なんだよ
謎をあつかうような仕事ですね
累月が来るたび霞みますように

ぼやけて滲んでやっと青春
苦し紛れに四季を過ごした
野晒しを愛した案山子の夢
佳日が春を変えてしまった
胃の中に閉じ込めておいて
文学が私の存在を肯定する
綴るだけなら雨でもできた

奈落にある食べもの

謎かけよりも返事がこわい
ランドルト環とは別の方向
靴下をさげるのはまだ早い
似ている他人ならよかった
明日摘むはずの花をもいで
ルルルララと踊っておくれ
太陽つぶして三日月刺して
別離用のフルコース2人前
物語が煮詰まったらひと匙
のけものとけだものときみ

絆なんてと照れることもなく
3つ目の恋はこの子にあげた
残り一月分のやさしいを造る
小鳥をながめるように触れた
ところでそのプリンはなに?
がっかりしたふりがヘタだね
抱っこしてもいいよ券くれた
いっぱいあるけどまだひみつ
住むには居心地が良すぎてね
きらいきらいやだすききらい
抱っこ券なんて今使っちゃえ

きまっていたよお願いごとは
みんなの中にはもちろん君も
ノーコメントとドヤ顔セット
転がって足もバタバタさせて
とっくに知られてたとばかり
我慢の限界もういいでしょ!
だめですまだ耐えられますよ
いいからさ認めてくんない?
すきになりたくないだけです
きっと来年もおなじこと言う
大好きって百年後に認めるね

All

どこかで破れるまでは正夢
呪えず恨めずただの英雄
鬼となるべく九つの死
理由ある双牙を抱く
もはや選べぬ沙羅双樹
寂れるいとまも与えずに
如何にも全たらんとする一
狩りの合図だ、犬歯を鳴らせ
愚かなりやと歌うべからず
真白の毒血を垂らしゆく
角も尾もまだ生えない
手つかずの領域をあげる
忌まわしくも愛しい左の目
累日重ねた新月を拾いに来た

はからずも春だけを写すと云う
異食主義者にはナイフとえんぴつ
今でないなら一生わからなくていい
六月が巡るため置き去りにされた十月
鈍色を抱えた臓器にやさしく触れる
羽根は載せずきみを載せた天秤皿
真夜中くらいいつだって造れる
堕落腐敗はゆっくりであるべきだ
泣くのは幕が上がってからにしよう
理性が似合わないまま朝になって
きっと綺麗で美しく無残なもの
檸檬を知らない子どもたちへ
嘆かず鳥でいられるものか
意識宿す眸には山梔子を

音果てには神様がいた
録音機の働く地下室
佳日だけ書きあつめて
撫でてもまだ白磁のまま
陽を継ぐ番人の左手には夜
出逢えなかったらこれを二粒
いずれの処方をお望みでしょう
ただ再構築を試みては灰色で
仮にも恋を騙るのであれば
椿との差異点を述べゆく
焚いた火では踊れない

靴が赤く焦げるまで
涙淵の底には細い椅子
エナメル似合う星の棘々
動機なき心臓たちの供述は
喪服は白藍空の真下でにじむ
たとえば誰かが涯てと読んでも
瓦解しゆく文学だけなぞっている
永遠ならば灰に散ると信じてました
どうか僕に捕まっていてください
猛禽類だから連れてってくれる

光が届かなかった、それだけ
狼煙のように喪失を眺める
奇蹟じゃなくただの鳥籠
性善説も裏切れないで
爪痕くらいは残して
誰かと誰かの約束
けだし四百四病の外
画材こぼして静かの海
カナリアと蜥蜴の棲む街
鉄錆沈む長雨を、瓶詰めに

総べてなお真火が邪魔で
べっこう飴と交換に闇
展開する遠雷架け橋
覗穴には鵺の正体
朧の所以に烟り花を
竜も虎もあるいは蝶も
春には埋まり消える惨劇
君に白夜を私には白昼夢を
未遂で終えた羽化を堕す
脳は隠して小指見せて
垂れて髄液、吐いて純血
命じてください貴方の欲を

仄かを棄てる火はもう来ない
白百合が蛇から奪ったもの
慕情でなくば何に従えと
獅子に隠れ咲くといい
四肢は脳に歓呼せし
絶えず空かさず言求め
黄昏にも法が与えられて
縷々と立ちのぼる朱の残響
裂いて咲かれて蜜を知る
意識はとけて惨の名残
禍たるを見逃す夕立
忌み火を読むべからず
融けゆくまでは腐蝕あれ

火種が繭をつくって昏睡る
枯れるなお前は春なのだから
凛の花首にも鎖をください
檻には貴方と星とを匿う
満つるまで月と謳うな
つまり魔法使いってこと
顕花の高貴を今こそ称えよ
累と呼んでしまえばよかった
獣と種子のさかいに二つ足
模倣した正義は可燃の日
のけものにもなれない
似月の乳白は誰の肋骨か
海が黄ばんでここまで臭う
迷い子のふりをしていました
零下のうちがわに孕んだ苛烈を
哲学はまだ生きてると君は告げた

濁らせてはいけない、辿らせてもいけない
喉から吐きだすにはあまりに惜しい
この先は孤独だけが赦される

地平線につづく死の道
25時には赤くなる靴
灰色が写りこむ鏡

うなだれるまでは見つめていた
優しいには条件が足りてない
エンディングが過ぎて翌日

苦いから、を口実に
蛇這う夜に奥を求めて
君のため空席にしてある

涙は真綿で包んで箱のなか
おはようただいまいってらっしゃい
指痕くらいは独占したい

第三楽章で幽霊になるひと
左目のお礼をさせてください
塗りつぶしそこねた楽譜なのに

動機はあります人形なので
めくれども白夜にありき
三つ角に那辺の手引き

淘汰にゆだねた一白を呑む
似色も停まる箱庭で
蕾はひとつまたひとつと鍵盤へ落ちてゆく

まさか薄氷に熱などと
透徹による白藍を繰る
10枚綴りのうちの2

ここが俺の海でいい
熟れることなかれ朧尽き
呼んだらとけてしまう名まえ

宇宙は一箱で充分だって言ったのに
始まりにいちばん近い終点で待つ
隠れたらいいの隠したらいいの
何語で歌えば泣きやみますか
うさぎの跳ねない夜でした
白いからきっとクリーム
月を食べて次も食べて
声も言葉も攫われた
より朝から遠くへ
永遠の藍を誓う

おやすみなさいを言ったきり
水をあげたら咲いてはくれた
上着を脱げば花婿にもなれる

さみしいときのまばたきは2回
殴れるくらいじゃまだたりない
柱時計みたいに律儀に鳴ってる

「見分けなんてついてないと思ってました」
「はじめてでこれですよひどくないですか」
「いいですか1たす1じゃあないんですよ」

遠く遠く遠く遠く、遠くへ
ら、までは言わせたくない
あげたい物と癒えない言葉

毒でも蜜でも滴れば舐めるだけ
どうせ祈るなら罪でも犯そうか
楽園切符じゃ海にはいけないよ

羊水に満ちたうちがわ
もう刹那は過ぎて永遠
まみれた手でもいいよ

小指だけでも回収したい
虹にはなれないから、雨
泣きやみたくないのに朝

だってあの子ではないし
いつか鳥になるまではごめん
「神さまなのにわかってないなぁ」

元気でつよくて楽しそうで有限
わたしの巣穴にようこそリデル
果てなきも逃避も救いも三択式

ぜんぶをあきらめたらそのときは
逆流しつつある運命には頸骨が
心中したいの代わりに告げる

このかたちで良ければお返しします
かつて傷たりえた火は埋まることなく
六月よ褪せてくれ、十月に死にたくない

夏庭に匿う
伸ばしたさきの左手
正しく底がある水槽

いいえ私が落としたのは毒ですよ
いまは小鳥だからと言い訳させて
泳げますし、もう傘はいりません

楽園から降る致死の雨

背骨が柘榴をつらぬいて
可不可の法廷に火はふたつ
いまを最後のことときと喚ぶ
脳には義眼ひとつでよろしいか
尾のある御使い、駆ける黒白
和解も許可も貴方がくれる
倫理包んで真夜のシルク

きみが愛せなかった白夜の名残
水をあげて陽にあてたらその次は
とびきりのエルピスはポケットの底
一緒に燃えてしまうのはどうだろう?
うずめても光ってたつつんでも凍えてた
攫ってほしい、しあわせよりも遠くへ
いまはまだ、平等しか知らない天秤
わたしも貴方も祈っていいはずで
いつかの幽霊があしたを指さす
似ている誰かであるとしても

ひらいてみせてほしかった
歯車ひとつくださいな
分解と増殖

とどけないしうけとらない
旅にでたっていう設定
理解の欠片

ずるいよいっこもくれないくせに
欲しがり屋のカレンダー
六月なんていらない

雨の象徴として濁ってほしい
霧は必ず火を隠す生きもの
残した影に口はいらない
夜と歌とを分ける役目
似た水を生きてきた
芸術とカメレオン

青と黄色に分かれるぼくら
傷口を奇跡で覆って剥がす
のたうつものおぼれるもの
世迷いを導く月光はいつも
二匹の蛇にも言えないこと
劇団員のスクラップブック

痣になるまであまくあまく
綺麗な指だから人形でいて
脳でも心臓でもないくせに
幼稚な望みではありますが
煮詰めた鍋の底にしかない
幻惑まで捨てたら何も何も

お前が勝手に信じただけだ、お前だけのストーリーだ
やめてくれよ、涙に意味なんかあるわけないだろ
素晴らしい最高のデッドエンドだ、主役は誰だ?
みんなみんなでまかせだよ、懲りずにまた信じたのかい

さよならもさみしいもおなじことです
微熱でできた百年でもいい
花に心を与えてはいけない
泣きしずくも錆びたころ

わたしを知らない物語
もう一度読み返せばきっと結末も変わってくれる
欠けても満ちてもおなじ名前で
君の瞳を手に入れた
睦言よりも歌をください

人形であれば愛してくれますか
輪郭も名前もなくなって季節だけが残って
パーティも切り抜けば僕と貴方のツーショットになる
「手袋忘れた」「今日は冷えるね」「(手を繋いでもいい?)」
瞳から宝石、舌には刃、君は君に似合うものでできている

サイズの合わない言葉を羽織って
君の理想のそっくりさん
37℃の苦い酒
手で触れるのも目を合わすのもきっと痛い
要るなら欲しいとちゃんと言え

嘘でもよいのにお前ときたら
いつかでいい、今じゃなければそれでいい
追いかけてくれたらずっと逃げていられる
鼠は秒針をかじる生きもの
わたしをいいかえてみただけなのに

文字も青ざめる便りが届く
閉じても塞いでも光は光であるということ
スペードにも心臓があるときいたので
死のない国へ続く道
暮れては夏殺し

やめて私をあけないで
エンドロール・ベール
唇にしかできないこと
秘密も抱かぬ鍵なんて
月面まで迎えにいくよ

凍え夜の月舟であれ
似せ火も暮れる仄冬
欺し緒に惑う事勿れ
明り途には赤蝋垂る
逆さ鏡が亡春を映す

迷妄発、屑籠行チケット
十二月の落ちこぼれを飼う
もし運命がわたしを許しても
星を飲んだのに光ってくれない
ちいさな水槽に匿ってあげようか

もうほんとうのこともはなせない
始末に負えない未来について
戻れないなら停めてしまおう
脳と脊髄を大輪にたとえて
はじめから幽霊と知ってたくせに

名無しは夢も悪夢も希望も見ない生き物
心臓も食べてあげられなかった
愚かしくも狂いながらも、今は歌いたい
詩が貴方を美化の獣に変えてしまう
呼び水に誘われて呑まれるも好いだろう

美しい君よ、燃える花よ、何故影は赤いのか
うまく笑えているでしょう
さぞや天秤も傾いたことだろう
欺瞞でできた左目
あさましいですうしろめたいですあなたがすきです

何と心中したつもりでいるのか
おぞましいものをみてしまったのだね
僕を肯定できる理由は見つかりましたか
覆りつつある法則を抱いて
害悪であり災厄であり、貴方であること
埋火は誰を指して告げたか

命題も定理も君を描けない
てのひらで包みこめるサイズの檻をください
怯えた怪物の牙みたいなひと
鍵盤には青が滴り
罰に釣りあう罪状が見つからない

暴いても奪っても貴方が私になれるはずもなく
のちに指へ刻んだという
陽の届かない国に射すもの
野に限りなどなかろうに
初めて柘榴を食べた日のこと

泣みだと蜂蜜
蛾が集るが如く求めて求めて求めた
貴方を呪ってもどうやらあの子は救えないみたい
欠けたのではなく消えたのです
繰り返して擦り切れた名前があります

懐かしむまえに悼んでしまうわるい癖
煙水晶に閉じ込めた野鼠の本音
零度がほどける微熱の夜
バカラグラスに角砂糖は似合わない
もしも貴方が私なんかを見つけなければ

四百四病の誤診カルテ
解体して組み換えた、ぼくは案山子になれたでしょうか
知りたくないし知られたくない、ぼくの422個の失策
喩えばなしだから笑っていいよ
乱反射のおわりに素顔を映してしまったひと

君、この雨すべてに名前をつけるというのかい
耳のない兎が耳付帽を手に入れて、手放すまでの9年間
花違いであなたに出会う
いつまで眠っているの、もうパレードが終わってしまうよ
巻き戻してやりなおして次こそは完成させます

もつれて絡まる糸は何色が滴るか
辿るは正しいデッドエンド
誰も運命を貸してくれない
濃紺が滲んでとける
たしかにひとりではないけれど

遠くの国でのできごとですから
壊死した言葉を花壇に埋めた
薔薇ではなく君であった場合に
失くしたばかりの水色涙
シャンデリアの下にあるという

戒めたいならわたしを愛してからにしてください
繋いだ手を離すために必要な89個の理由
もしもといつかでしか留められない空ろ約束
NOとYESとGOの関係
僕を役立たずにしてくれたひと

釘とペンをまちがえた
ノイズの裏、静寂の朝、さみしがり屋の音楽隊
「嘘にも居場所が必要だ」
創造と諧謔をこねてつくった歪んだ鏡
ささやかでおだやかな、死と詩と死

厚い紙束が散らばってそれから
思いつく限りの否定をぶつけてやりたいのに
眠れる花に名付けた愚かは誰だ
無垢と純真を棘冠にして
理詰めの仮死は今日もあまい

全て赦されて何もなくなってしまって
別の理由が必要なら私のせいにでもしなさい
手首も名前を欲しがった
幽霊でいい化け物でもいいあなたでなければそれでいい
名実ともに白殺しとなる

偽せた罰でもいいと言ったのは確かに私でした
「しあわせだ、どうしても、しあわせだ」
手品ですか詐術ですか奇跡でいいじゃないですか
視線を合わすのも指で触れるのもきっと痛い
待ってください、六時を過ぎても生きていたくない
お前が語った「もしも」はぜんぶ、この腹のなかにある

運命が涙を赦しても、君だけは見破ってくれないか

「まだ自分を悪魔だと思っているの」

番人のための火はふたつ
この心臓が偽物でもお前は憎んでくれるのか
つめたいさむい椅子がある
喉に鏡の破片が刺さってしまって
蹂躙も傲慢もなにもかもが借り物でした

カクテルグラスで閉じこめて
泣きたいから海にいこうか
青星食べた鯨のゆくえ
遠くで綻ぶより隣で枯れてほしい
旅の終わりに咲くという

鯨もねむる午後でした
蜜の滴るひとすくい
蝙蝠傘が隠した一花
アスファルトと縫い影
わたしを満たす半分の世界

一針でいいのに春より遠い
停めたらずっと凍えていられる
三千綴じた一行目
さみしさとやくそくのはくせい
春には赤い棺がほしい

稲妻の串刺しと薄星のオードブル
落星砂漠
空と水に小指があれば
一夜嵐に名を許す
おまえの海に星はない

妄執は足裏に貼りついていた
現に夢に鏡の奥に
全ての偽りを攫ってゆこう
丁寧に慎重に、私は貴方を否定する
手つかずの領域を赦したりしないで

もっと上手な理由が見つかってからにしよう
入れてくれ、ひとりで苦しいよりふたりで死のう
意味なんていらない、理由なんてほしくない
枷も鍵も無数にある
いいえ、私が棄てたのはあの日であり貴方ではありません

懐かぬ犬は好い馳走
羅針は我が独裁を指し示し
馬鹿げた真実より美しくも脆い詭弁こそを
縊るだけの価値がお前の首にあるのか
羅列した愛の言葉と、塗り潰した一行を

ついておいで、お前のための獄がある
適切な薔薇と不義理な小指
優しくしよう愛してやろうそれが罰になると云うなら
露悪で醜い私の仮面
憂いだけでも盗みたかった

「君を赤で造る」
この醜悪で君を導く
眠りたくない夜に会おう
鴉であれば縊ったものを
「君が棄てた方の神様さ」
頭蓋に匿うことしかできない
どうかぼくのこころもたべてください

真白に喰われてもまだ
禁忌は私をゆるすだろう
伝うしずくを褒美と呼ぶ
欠落に触れよと申されますか
優しくしたいし食べてしまいたい

優しくて正しいはずの世界

やめてください、そんな顔をしないでください
ささやかでつつましいものをよろこべというのでしょう
静かに、ひとつずつ、確かに、この手にありました
苦しいですか、かなしいですか、わたしもです
手を離すことができないのはちゃんと理由があります
たったひとつ、ふたつとない、そう、たったひとつだけの
だけれど貴方はわたしにくださるというのですね
しあわせだと笑ってあげましょうか
言い逃れです、ぜんぶ嘘です、だから信じないでください
恥ずかしいです、貴方はわたしを知ってしまうから
ずるくてもゆるしてしまう貴方をゆるせません
野ざらしにでもしてくれたらよかったんです
正解はわたしが持っています
片方だけならあげてもいいです
今じゃないならもう、もう捨てようとおもうのです

銅貨がいい小石がいい
計算式の監獄
逃れ逃れておなじ顔
思い出せるのは死因だけ
遊園地から出ておいで

夜に踊る子どもたち
つたない花冠をどうか笑ってください
辿り着いた夜よ明けるな
光ではなく劫火でよければ
花枯れでもあるまいに

紡いで束ねて羽根となる
火を遺して去れはしまい
雪でも降れば託せたものを
ここから先は人形の領域
棺に入れられなかった方の花

魔王のように貴方は囁く
両手いっぱいの風船であの子を攫う
一片の偽雪
口笛吹く愚か者
おなじ獣になれ

君の舌なら火にくべたところです
貴方の背にある鍵穴について
夢からあの子を逃さぬように
銀盆に載せるべき月世
埋めたら忘れるはずだった

鉄塔には三日月を添えて
歌を花を手紙をあなたに
過ぎし午後の陽を騙る
世迷い断ちきり鋏はいかが
烏のようにと乞う少女

盗んだ心臓の脈も止まって
そんなに宝石でいたいなら
罠です嘘です来ないでください
鱗粉辿って森のなか
贋せものでいたい

秘密はいつか怪物になる
蛇になるための三ヶ条
幽霊になれない呪いをかけた
一掬いの陽炎
アルファルドの拍動

水平線に咲き乱れる
誰かのための主人公
林檎売りの独白
十三日のお別れ会
21グラムの魔法をください

烙印みたいなキス
神の子だから奇跡を知らない
抽斗からこぼれる春春春
冬の瓶詰め夏の缶詰
切手を貼れば扉ができる

羊の骨が邪魔な朝
純度89%の孤独
鍵なんて飲んでおしまい
泪花の園
異形になれたらまたおいで

山羊頭の予告状
お客人には迷夢をひとつ
幻象キネマ
似紫が終わる
何者も孵るべからず

彷徨い咲く花に追われ
黄昏時には手錠をかけて
骨も思い出も残さずに
星座になれない物語
億枚の羽蟲楽譜

冬の背を刺す
頭からバリバリ食べてしまおう
空、満開に包囲される
長い長い長い長いトンネルをゆく
或いは赦された世界で

あの子の指が届く
死期のある庭
四季のない庭
こちらの首でよろしいですか
春攫いの幕

星一つ落とせもしないで
あの子によく似た砂糖菓子
喜怒哀楽蒐集家
銀紙に包んだひみつは甘い
ある日森のなか狼さんと出遭って

ホットミルクの薄膜事件
花嫁さんはいちご味
あなたの檸檬にはなれない
蜜色便りをつかまえた
毒見係の試食会

シアンの雨乞い
夾竹桃で最後の晩餐
光も風も守護の牙
マゼンタまみれの惨劇
希望絶望グラデーション

24時の鐘が夢を嘘に巻き戻す
黙詩
囁く蕾
沈めたはずの宝箱
既視館の正夢塔へご案内しましょう

足枷ひとつくれないで
閃光構築士
お前の知らない誓いに生きる
天秤皿には羽根と君
青を知ってしまったために

メトロノームの宣告
モノクルエピソード
闇纏いの一瞥
口笛空耳月隠れ
九夏王の敗北

生贄少女と一角獣
あなたのためのわたしでいたい
青猫消えた
さらばの喝采
泣いた透明人間

海も銀河も知りません
スペードさんちのあの子をさがして
遠く遠く遠く、遠くでのこと
金平糖に願い星まぜて
さよならカクテルはいかが

サーチライトと万華鏡
四本の鍵と五つの部屋
三つ星の罪状
彼女はふたたび囁いた
泥棒一名様ご案内

街売り屋の少年
革命家の朝食
灯された樹
10シリング6ペンスの招待状
硝子細工も枯れゆくお時間

青春よ我に降伏せよ
飴玉図鑑
ハッピーエンド包囲網
サイレンが鳴ったらキスをして
真夜中の砂糖漬け

五月の穴底
やさしいさみしいことばだけ
ごらん、あれが魔女だよ
氷銀の環
まだ誰もいなかった世界で

僕の影をお食べよ
どちらの仮面をお望みですか
梟隠しの迷宮
蝶と散る
毒には毒を、夢には夢を

灼熱をおしえてあげよう
全ては25時間後のおはなし
火集い蟲
五感匣
雨狂いのひとふり

お嬢さんには揚羽を処方しよう
往復一日書簡
太陽に垂れ幕を
蜜の条件
カウントダウンで繋がって

青い鳥あげる
落とし穴さがして
終わりの再来
失くした夢はこれですか
なんでもない日にさようなら

君よ我が王であれ
砕け散れマスカレード
小人さんみたいな生活
もう一枚の鏡であるあなた
君の死因を数える

私のような悪でよければ
首狩りジョーカー
けれど誓ったので
さみしいケーキ
だれでもいいならぼくでもいいね

サナギのまま卵のままで
贖えると思えたら会いに来なさい
已める式日
花拾う迷い道
巡る蜜月

辿り着いたこの獄で
お菓子にだってなれる
蹴る石を間違えないでください
ふれてはいけない白い幕
七日後の道化

波紋をすくう手
舞姫ならば救えたか
ビニール傘の雨殺し
過ぎたる白昼が夢
お前なんか海でいい

数えるくらいは許してほしい
ジェンガも夢を見た
振り子もいつかは
ろくな心臓に逢えない
ろくな真相に遭えない

三日月の刑
女王蟻の羽を飾る
西日心中
導かれて金盞花
魚になる練習

王子様は鏡に向かっていいました
二度目の果実
うそつきと音楽
なら左頬も出すがいい
業火をひとつ分けてください

働きアリの計画
獣と星が出逢うとき
百年とあと一日後の話
藍と哀を分かつもの
ノエル、君に会いたい

呪いのキスで目をとじて
理由はいらない君もいらない
嵐落ちの盃
ヒーローに夜はない
蝶となるかそのまま死ぬか

ひとつ摘んでは愛のため
角砂糖号令
暮れし日の革命
幽霊になれたらさらってね
もし君が羊であるならば

亡くした花にも歌を添えよう
失くした火には何を供えよう
ただの憧れにもどりなさい
夜が優しすぎたから
路地裏鼠のプロローグ

世界の欠片をもらってしまった
いないいないもすきのうち
泣けなかった鬼のおはなし
言葉と秒針、どちらが痛いか
もう一度あの嘘を聞きたくて

日曜日をあつめて
風船とガム
君が食べた太陽は
やさしいだけの時間をくれよ
あなたの正体は戀である

或る花の懺悔
隠したつもり守ったつもり
まだ私はわたしのもの
サボテンの呼吸
眼鏡をかけたトカゲの朗読

しっぽがあるのは仔犬だから
アールグレイが待っている
フルムーン・オルゴール
好きな孤独を選んでください
雨降らしと相合傘

おかえり僕のシャボン玉
夜明けが来るのは君のせい
拝啓わたしのピーターパン
影がふたつに戻っただけのこと
箱庭の恋人たち

あるところに独りのわたしがおりまして
ひまわり畑に黄色を隠す
午前二時の魚たち
探偵さんならわかること
怪盗SOS、君の明日は包囲した

仮名IF氏の遺言
あの子の鱗も光っていた
薄明束ねて
鵺鳴く夜のおぼろ
インスタントメロディ

うさぎはいまも白いか
秘密はいつでも双つある
次に星を入れて混ぜます
椿であるように
確かにあなたの歌でありました

白は透明に焦がれるあまり、
ちがう星のまたたき
365日前の消印
靴音オペラ
指に一葉、背には紙魚

未明が嗤う
あなたの指紋でいたずら
まだ私に恋をしない
叶えたいからわがままいって
三行で終わるはずのおはなし

やさしいわたしになるために
貴方の抱く心臓が誰のものでも
悪魔だけがゆるしてくれた
愛した鳥が青くなくても
蜜のかぎりに咲く花は

あなたに贈る18曲
早く枯れてしまいたい
どの夜の悪夢にしますか
骨の行方
泣いてる顔も見せないで

不可視の花が香る
どの真白に落とすべきか
底までいけば甘くなる
いつもより半分の日
不明に射す

悪夢がため
雨産む眸
春を埋めた
何を贈れば笑ってくれるの
私まで救ってどうするんです

世界の果てでしか会えないひと
ドッペルゲンガーと呼ばれて
時計塔は見ていた
正しい呼吸と不誠実な食事
明くる日の白々

「いつか」が今日であるということ
いらない星を青く塗る
錆びつ咲かせつ夜が花
いまも白夜で
かごめかごめ、加護の外できみは

お前を過去と呼ぶ
裂くためだけの光でした
あなたの残酷はこんなにまぶしい
刃に涙は似合わない
地獄ほど私にやさしい世界はなかった

レンズ越しには羽根が見えた
矛盾を創る右手、現実を溶かす左手
銃と砂糖の天秤裁判
わざとだってあなたはわかって
百年経ったら恋をしよう

海の底で会ったふたりのおはなし
愛したいだけなら人形でもよかったはずで
肉屋は笑って手をのべた
だれがくれた幸せだろう
王冠を躊躇ってはいけない

今日の私は誰役ですか
狂い兎の白白白赤
遊園地になるか廃屋でいるか
四肢累々
あらがえばやめてしまうのですか

ぬぐえぬ汚れでありますように
誓いは破れない、だからぜんぶ燃やして
加護の手は傷だらけ
宝石なんかにならないで
カレンダーに丸をつけてはいけない日

手折った花から死臭がしても
ことばしかしんじたくありません
お化けにしかなれない
紫空の真下
彩色顕微の鏡

皿には貴方のものだった心臓を
星が何を求めるものか
潜れども無為の底
疚しくも恋
君に似合う烈々たる火を

浮かべた涙にも陽は射して
バターをなめれば君の味
飴玉ふたつで瞳は完成
弾丸50g火種1cc
刃も持たずに恋などと

春が来るとも知らずに君は
おいで、拒絶してあげる
歌えば人魚も笑うだろうか
踏んでも蹴っても縋っても
ありがとうとおめでとうでできた子ども

敢え無くも救われて、それから
どうして泣いたかもわからないのに
一揃いの宵闇
ワイングラスに火をくべよ
未必の玉座

羽根も持たない影なんて
憂鬱とオーロラ
小さじ一杯分のデート
もしもあれが夢でなければ
踊ってください一度だけ

舞台裏でプロポーズ
豚には豚の法があり
どの手錠にしようか
貴方は三枚目を選ぶでしょう
楽譜に名前は必要か

二文字しか言えなくなる呪いは魔法
長靴いっぱいに夢詰めて
板チョコ時代の革命
追伸、わたしにはサンタさんがいます。
少年と少年と青年

オルゴール国の歯車売り
ことわりを掬いに
さがしてほしくてかくれんぼ
マザー・グースになりたいか
宇宙に法則なんて見ちゃいけない

誰の心臓かも知らないで

毒林檎は森の奥
這う者どもが夢見た罰は
あまいしろいやさしいこわい
天秤に載せた地獄とお菓子
誰が為の眼球か

うそつき涙は蜜の味
十三階段に赤い靴
月面よりは近いらしい
お妃様が魔女になる夜
美しい仮面の条件

貴方と居ることが私への罰でした

貴重な時間を無駄に過ごそう
方舟に貴方が乗るなら私なんて
永久に乞う、永遠に想う
居ても居なくてもよくなるように
流転も輪廻も意味がない

後悔してないだなんてどの口が言うのです
隣を歩きました、貴方が躓けばよいと
がっかりです、そんなことで喜ぶなんて
私の分のグラスは割って
へたなうそはほんとうになる

残せたのは枷の痕だけ
罰がほしくて犯したあれは確かに失敗でした
でも私にはこの罪に生きるしかないのです
しかしもうそんな想いも消えそうで
たすけてくださいあなたにしかたのめない

すべて悪魔のせいにして
いずれもさよならにはちがいない
牢獄に隠した左手
水底風果て世界の終わり
捨て台詞みたいに大事に大事に仕舞っておいて

貴方のために咲く花がどうか火花となりますよう

あなたを刺した閃光の正体
泣月の弔い
たかが曠野で何を嘆く
残り火を恋と呼べるか
躊躇うことなく摘んだ罪

命題ならば眼窩の奥に
偽首蕾が燃えていた
さしずめ道化と云うほかなく
狂うがよいか迷うがよいか
春を縊る

亡くした夜に群がる羊
瓦礫でできた玉座に召しませ
どうせなら毒杯がいい
嘘偽りなく貴方のための白花です
神さまになってはくれませんか

標本箱に匿ってあげよう
発条仕掛けの兎が跳ねる
汝、誓い給うなかれ
ところであの獣の首は
鳴り響きたる終わりの鐘よ

隣人に触れるべからず
まします裏切り者どもへ
鈴でもつければ気付けるだろうか
夜深なる憂い花
烏有の果てで今もあなたを捜しています

お眠りなさい、光射しこむこの部屋で
幼い夢に囚われて
眠れずの腕の中
夢魔をこの手に
理念が月を削りゆく

那辺にお帰りなさい
更紗で包んだ白昼夢
否も異物もこの手が産んだ
ひなたにあの日を置いてきた
輝かしいのは明日だけか

林檎がおしえてくれたもの
さながら始まりの火のように
詩があらゆる言葉を奪ってく
金色一粒飲み込んで
無実を編んで果実にしよう

ここに無いならどこを探したって無いんだ
のどかで平和でありふれた革命
へたくそな口笛で誤魔化して
屋根裏部屋に仕舞ってあげる
出逢うすべてのさみしさ抱いて

君さえいなければ不幸せでいられたんだ
耳を貸して、とっておきの嘘を贈るよ
蛾の集る月夜でありました
透明にもなれないで幽霊ごっこか
下ろした荷物のなんと軽いこと
たまらず叫んだ、僕はここにいる!
躊躇いなく抱き返してくれた君の名前は
くだらないしつまらないしだれにもいえないことだった
育つまえに摘んでしまおう
覗くための穴じゃない
響いてくるはずのない靴音
まさかと驚いてほしいんだろ
出掛けよう、できることなら手でも繋いで

落ちゆくときのお約束
奇跡も燃え尽きようとして
間に合うはずがないんだ、叶うわけがないんだ
どうか不幸せにどうか不幸せにどうか不幸せに
願いではなく誓いであれと

哀しみも空しさもなくなった
ラッパでも吹こうか
繕えば裏目に出るし打ち明けたら責められる
ぽつり落とした本音も沈む
なりたい夢も昨夜の夢も
僕の影でも踏めますか
靴ズレみたいに嫌われた
似合いの蔑みをください

つまさき触れれば光る地面
あの子もここに来ればよいのに
おやすみなさい、いってきます
あなたのいない朝なら悪夢です
好きなほうを現実と思うことにする

旅を見送るだけの生活
眠る君を好きなだけ
星空なのか眩暈なのか
くるくるくらりの浮幽霊
踏み外しては深い底

化け物みたいに生きてくれ

なでてあげたらつぶれてしまった
毛皮を剥げば人間になれる
はらぺこ泣き虫
愛情とナイフとフォーク
ずっとずっとずっとずっとずっとずっとこうしていたかった

こんなに君を好きになるだなんて
たくさんプレゼントを用意したのだけど
ずっと一緒にいられると思っていたのに
これがわたしのための祝福だとでも
好きでした、でももういりません

さらば過日の共鳴よ
まずは手持ちの未練から灼いてしまおう
子守唄だけ道連れに
見つけたいものなんてほんとうはなかった
次の後悔まではこの後悔を愛そう

二秒だけなら海も止めよう
青くないなら咲いてはいけない
きらいときれいの乱反射
月揺れ夜に雫落つ
恋と遭わない方の道

ましてや秋なわけもなく
忘失リボンで結ばれた
紙魚棲む仮宿
「NOT」で掬え
あちらの後悔からになります

青空くらい造っておくれ
今日も秋です明日は春です
あなたも膿んでしまうのですね
入道雲をグラスに盛って
最初はミルクを飲みたいだけだった

ただのうそだよおまじないなんかじゃないよ
ちちんぷいぷい、あの子になあれ
手帳に描いた赤いまる、その翌日のおはなし
兄弟になんかなれやしないぞ
欲しかったものだけ集めてできたガラクタ

澄みゆく夜長を停められず
春の朧を乞うても未だ
黄昏詰めて満ちた月
伝う雫に冬を諦め
要らない方のお城

最初の裏切り者として
化石になってしまえばおなじ
ぜんぶまぼろしだといってください
限られた永遠をめくる
あなたが夢ならわたしは幻となりましょう

鍵穴に棲む獣
貴方につまづくための靴
虫が蜜になるまでぼくら
一葉のモノクロでさえぎこちない
瞳からこぼれるのが光でありますように

魔法はとけないから魔法なのです
ぼやけて滲んで消えてくれない
路頭に迷いあなたに迷う
四肢は求めていたけれど
逃れ火に叫ぶ
悪魔にだって神はいるのに
きれいでやわらかいものはぜんぶ食べることにした

秒針泥棒
さあガラスの靴を寄越しなさい
一秒心中

日曜日の学校

チャイムが鳴ればいつもの教室
藻浮かぶプールに波紋ひとつ
図書室でマッチをかざす
影は学びたがっていた
チョークで書かれた断末魔
校庭の声に振り向いたらさようなら

謡われるべき悲劇

魔悪を振りきれず
帽子を脱げば戻れましょう
ロストエンドシティ
詞花を手折って嘘を摘んで
脳と唇の違いを答えよ
空いて吹く風もある
幾何学模様のお便り

後悔なんてできないように
ぼくからいってもいいのかな
0点だからうつくしい
垂れ光は甘いもの
ルビを振ってももう読めない
屈折光の色数の分だけ
望んでこぼしたはずなのに
満ちてあふれてあまさず飲んで
星消えゆくを数え数えて叶えるか
滴り落ちるものに手を伸ばす
手と手を繋いで結晶となろう

青いだけの夜がありまして

影も隠れていないいない
風も月もうそばかり
逆さまごっこを始めよう
迷子の君を先頭に
お前が夜明けなわけがない

綴じた世界
花の向こうには誰がいる
涙にだってなまえはあるのに
ガラクタだらけのパレード
さよならの蕾

腐り落ちたのは果実だからと思いなさい
筆跡辿って兎穴
奇跡だけ食べて
つまり終わりがないってこと
遠吠えなんて破いてしまえ

失くしたものはぜんぶ池の底に沈んでる
見つけてほしいのは裏切り者だっておなじ
駄作で終わればよいものを
文字に心臓を与えたために
止めた秒針は今も六時を告げてくる

幻さえも少女を隠す
累が呼んだ花曇り
よい子のためのかなしいエピソード
常春が死ぬる庭
愛しさよりも吐き気が勝った

次から次へと角砂糖
たとえ話みたいに話したけれど
切り裂きジャックのハート狩り
三日月落ちた五月の顛末
気狂いじみた手紙を書いた

水をかけてもおしまい、火であぶってもおしまい
我執が空を覆ってしまった
祈るくらいなら探しなさい
なかったものといらなかったもの
いつかの三文字に縋って

ボロボロでくしゃくしゃの一枚目
苦し紛れについた嘘が嘘じゃなくなる日
画家から黄色を奪ってそれから
知らない、どうせ本物じゃない
理由ではなく言い訳が欲しいのです

ただし君はいないものとする
駆けつけた惨劇と間に合わなかった幕引き
捕まえますからどうぞ果てまでお逃げなさい
ただただおもうのはあの子がまた迷子になってないかということ
是を否に代える銀のコイン

「N」で始まる単語のすべて
ブリキの首を刎ねるお遊び
のべつ幕なし芝居を続けよ
心を映す鏡の破片
正しさにばかり縋っていては

円環で閉じた国
乙女の眠りを守る騎士
絆より深めたかったのはこの傷でした
妙艶なるは我が女王
破滅にしますかワインにしますか

目次に隠した最期の章
蔦と足首
手慰みに未練を縊る
いささか無粋でしたでしょうか
綴りたいのは涙かもしれない

敵になるか弟でいるか
死因と動機と台本と
巻き戻して繰り返してまたおなじ棘を踏んで
つまらないなら書き直してくれたらいい
楽しかったことをぜんぶ思い出にしてしまうひと

ノクターンマインド
哀しみは宝箱に、思い出は屑籠に
君には聞かせられないおはなし
蜜味の紅茶とお手製のケーキ
喫んだ紫煙もあの子も消えて

泣いてしまうから今は会えない
犯した積みが潰した一夜
連なる余白を埋めるため
尽くしの忠義で濁ってしまった
朗読した誰かの台詞

運命だった、そんな言葉ひとつに負けて
消えてしまった前日譚
未必の完成エピローグ
野ばらよりも赤い花花がぼくの部屋に咲き誇る
知らずのうちに救われて、君、図々しくはないか

明日でなければならない理由をひとつ
罠を仕掛けて嘘もついてそれでも捨てられなかったもの
せっかく奈落なのだから
踊りましょうと猫がいう
続きを聞きたいのなら黙っていることだ

向こうにいってしまったんだとばかり
午睡がゴールとも知らずに
うん、ほんとうはね、ずっとずっとここで見てた
もう時計の針だって動きだしたんだ
飲み込んだぜんぶを吐き出して残ったもの

瓦解は悪夢に射す光の仕業
訪ねてくれたのも尋ねてくれるのも
理に適ったお別れ
箱庭に棲む兎は待っていた
いくつかの約束と絡めた小指

綴りで遊ぶことを思い出して
亡者は僕の方だった
記憶のほとりで少女はねむる
見果ての夢からおかえり
野晒しベンチでもう一度

誰が為の鐘だったか、あの日、君に逢えた
目を逸らしたのがいちばん最初の罪だった
偽物でも理想でもなくただ君がいるということ
あなたの幸いで手紙が埋まりますよう
累月にも霞まない、花の面影は君だった

花に至る病
花毒が少女も染めあげて
魘された骨が鳴る
一匙の計画
影には末路を

或る人形のための葬列
綻ぶすべての色に捧ぐ
ナンセンスの墓場
爛漫さえもぼくを嗤う
聖と死を天秤にかけて

火を追う才能
春の指揮者
銀のインクでも涙は書けない
迷子はいつだって逃げていた
言葉繰りの糸人形

数ある孤独
冬が僕らを縛るので
あれから夢をみない
億光年を見る眼球
君がいなくなったという便り

指折り日和

一度だけなら色もあげよう
海が残したふたつの音楽
三回唱えて落ちた星
いつか四季さえ止まったら
零なら欠けることもなかった

ここでの秘密はポケットにしまって
ぼくを毎朝生かす白色
冷静になってはいけないよ
垂れ光に目をつむる
見つめていたらとけてしまった

ルービックキューブの角事件
くるしいならいいよ、らくになるといいよ
をはるせかいで鳴り響く
呪いが願いに変わるとき
みんなで腰に手を当てて、それ!

星は消える、涙はあふれる、それでもまだ望むのかい
してほしいこととしてあげたいこと
手ずから受け取ってほしいのです

仄かが一つ火を揺らす
わたし役のあなた
掌がふたつあるせいで
聖と死を天秤にかけて
怜悧の刃をそっと包む

瞬きを切り取る悪魔
爛漫さえもぼくを嗤う
目を離すとすぐころす
空欄には名前があった

春と秋の色でできてる
理想の階段は目裏にある
罪でないなら何故雨が
ほんとうは知りたくないのかもしれない
水乞うくらいなら渇いておしまい

ルールにだって黄金はありますのに
この水が甘いと誰に聞いた
だからわたしに拾われるといい

0と1があの子を拒む
紙も活字も食べるもの
改行にすべてを籠める
かつて140だったもの
音符が降る、五線譜で弾ける

さみしがり屋は手も繋げずに
小指でいいんだ
見つけた星を砕いてまわる
水たまりはあの子の涙だ、踏んでしまえ蹴ってしまえ
見ているだけでは枯れてしまう

もし、あなたは獏では御座いませんか
だれか鸚鵡をつれてきて
椿を知るまえに
万華鏡が降る
春降る夜